22.06.03

コインランドリーに向かういつもの道の途中にある家が取り壊されてめちゃめちゃになっていた。建物の取り壊しはいつも昼に行われて、夜にはそれが昼の終わりとともに中断されたまま、重機もさっきまで動いていたような格好で静止しているのでどきっとしてし…

22.05.26

セレモニーは何かと入り用なものが多いなとか思いながら友人の結婚式に参列する準備に色々と買い物をした。こういう準備にかこつけて物欲の制限を取り払うことを自分に許した。セレモニーの場において新郎新婦に贈ることができるのは祝儀とせいぜいこの身の…

21.12.02

熱帯砂漠の成因を振り返ろうとしてウィキペディアで海流について調べているうちに、18世紀のステラーカイギュウの絶滅の顛末を語る記事まで流れ着く。ベーリング海の無人島に座礁した探検団の食糧や皮革、燃料の供給源として発見され、のちに母国で紹介され…

21.10.31

投票所に植えられている赤い実がミニトマトかと思ったらトウガラシだったというツイートを見て、高校の卒業式の直前にトイレに生けてあったトウガラシの実を食ったり食わせたりして式の日まで謹慎処分になった同級生を思い出していた。その件があるまでトイ…

21.10.01

目の端で犬が暴れていると思ったら店員のおばさんがアイスの冷凍庫に値札を立てていた。レジに並んでいる人が目をひん剥いている。風がワッと吹いて子供がキャッと叫んでいる。大きくて柔らかいものに勢いよく抱かれる心地がして楽しいのだろう。

21.09.30

顔の周りを飛んでいる蚊を見失った。こうなるともう、蚊がいま自分の身体のどこかを刺しているのかもしれないというぼんやりとした不安を抱えながら、どうかどこかに行っていて欲しいと祈ることしかできなくなる。数分経って、顔の一部が少し痺れて皮膚の感…

21.07.29

会議中に偉い人が少し噛んで「あるんだよ」を「あるだよ」と勢いよく言うので痙攣みたいな笑い方をしてしまった。すぐに言い直していたけれどその一瞬の間にかなり濃度の高いバツの悪さを感じていたであろうことはバレバレだ。ただそのバツの悪さに人間のチ…

21.07.27

風が強く吹いていて横断歩道の向こうに横に並んでいる人たちの輪郭が高速でぶるぶると震えている。風が全く吹かない地域の人は、アニメのなかでキャラクターの髪や服が風でバタバタと羽ばたいているのを見て何の事態だと思うのだろう。突然ひとの輪郭が高速…

21.07.03-07.08

これはもうほとんど水泳だと思う。どんなに高速移動をしても振り切れないほどの、砂かゴム膜くらいの固体感の湿った空気と霧雨がぜんぶ身体に張りついてきて勘弁してほしい。水ははっきりと界面を持った物体だということがわかる。勢いよく放たれた水は塊と…

21.06.21-07.02

何となく日記を書くのがだるくなってしばらく書くのをやめていたらなにを言うにも慎重になってしまってそのうちなにも言えなくなってしまった。日記を書くとき日記のことは書かないようにしようと思っていたけれど調子がおかしいときにそういう自縛をしてよ…

21.06.20

何かを言うことで言いたいことが出てくるし、何かを書くことで書きたいことが出てくる。言うことで言う身体になるし、書くことで書く身体になる。ときに何かを言ったり書いたりすることは、自分のなかにある言葉をひとつ外に出して、わたしと世界の間に放り…

21.06.19

浴室から出るともう家を出る20分前になっていて、どうしてこんなことになったのか訳がわからず混乱した。呼吸を整え、シャワーとドライヤーで火照った身体が冷めたころ、六本木に着く。荒川+ギンズの作品はかなり不気味だと思う。目の前にあるものがいっさ…

21.06.07-18

疲れてふて寝を続けていたことしか覚えていない。観たいもの読みたいものやりたいことが多く溜まっていて可能な限りそれらはやるけれどやったらやったでその証跡を何かしら残さなければならないという強迫観念がありその日起きたことなんて覚えていられない…

21.06.06

夜通しで何かしていたあと泥のように眠るとたいてい夢の中でもその音なり声なりが鳴り続けている。映画を観たあとは意味の取れない、存在しないセリフを、俳優がそのひとの話し方で、映画のなかで使われていたであろう言語で話し続けているし、クラブのあと…

21.06.05

5年後になって、あの年の誕生日は何をしていたかと振り返ったときに、今年のことはわりと思い出せると思う。この日の質感みたいなものが残っている。展示で見た写真(の映像)の透明さ、ブラッスリーで食べた白アスパラの甘さ、疲れて寝ながらオールナイトで…

21.06.04

東西線が落合を過ぎて地上に出るとまだ明るい。まだ今日が終わらないような明るさで、地下を静かに潜航していた気分がこちらの同意なく晴れる。ひとの乗り降りや窓から差す光や色とともに気分や思考が入れ替わっていく。乗り換えに失敗しながら映画館に向か…

21.06.03

洗濯物を乾かしにコインランドリーに行くと、巨大な蜂がいる。蜂を刺激しないように、戻ってきたときにはどうかいなくなっていてくれと念を送りながら洗濯物を投げ入れる。回転が終わり、ドラムの蓋を開けようとしたとき自分のすぐ横にそれがとまっているの…

21.06.02

「心の穴を埋める何か 失うことを恐れないわ 自分のことを癒せるのは 自分だけだと気づいたから」という歌詞にしばし立ち尽くしてしまう。

21.06.01

よく覚えていない。

21.05.31

同じ車両に乗り合わせた二人がたまたま知り合い同士で、一方が控えめに話しかけるともう一方はわずかに混乱したあとすぐに事態を理解して表情を明るくする、という場面を眺めている。知り合いとたまたま同じ時刻の同じ車両に乗り合わせるということは珍しい…

21.05.30

イメージフォーラムで矢作さんに偶然会う。映画館で遭遇することが多い。約束をしなくても、ここに行けばこの人に会えるかもしれない、という場所がいくらかある。何を話そうかとか頭の隅で考えながら向かうけれど、そういうときは大概誰にも会わず、会うと…

21.05.29

窓を開けて換気扇を回す。直線に連なる3つの部屋を空気が抜けて、カーテンが膨らんだり萎びたりしている。家の呼吸とわたしの呼吸が同期してそのまま眠りに落ちる。

21.05.28

空が赤い。腕を宙に挙げて、皮膚が薄く染まるのを見ている。人間が作ったわけでもないのにこんな色の光が確かに差していること、すべての光が色を持っていることにしばらく当惑する。11年前に初めて夕焼けを発見した。iPhoneに乗り換えて、いつでも好きなよ…

21.05.27

ひとを見送る。一緒に見送ったひとが、いつも見送られていたから見送る側になるのは初めてと言っていた。歳を重ねていくにつれ見送ることが増えていくのかもしれない。見送りとはひとと隔たってしまうことを受け止めるための儀式だ。行ってしまった後ではも…

21.05.26

道行くひと皆空を見ている。月は雲に隠れて見えない。もしかしたら月は無いかもしれない。それでも皆見ている。それがあると分かっていながらそれが見えないとき、かれらは月から雲をはさんで隔たれ、それに触れられないまま、しかしそれがあると信じるしか…

21.05.25

洗顔の泡が鼻に入り、鼻腔粘膜が焼ける。まだ起きて一時間も経っていないのに、今日の一日が鼻のむずむずとした感覚に塗り込められることが決定する。それからこの身体は、鼻から水を流し続け、息を吸うたびにくしゃみをし続けた。全く支配の及ばないこの身…

21.05.24

東京湾と隅田川の混ざり合う汽水が蒸発し、首都高5号線下を空気がゆっくり動く。日本橋あたりに到達するころ、こちらは昼休みを迎え、潮の匂いと鼻先が出会う。プランクトンの匂い。ヤクザの匂い。糞尿の匂い。なか卯で食べるうなぎ丼のうなぎと海苔の匂いで…

21.05.23

前髪を引っ張ると毛先が舌に触れる。間違いなくこの1ヶ月で2cmは伸びている。俯いて作業をしていると目や鼻先にチロチロ当たって顔中がむず痒い。毛先に薬剤を塗って待つ間、ビールを出された。額にタオルを、首から下にカットクロスを巻かれながら大人しく…

21.05.22

食べたもの ①白ごはん+大人のふりかけ(鮭) ②KFC ペッパーマヨツイスター+チキン+ポテト+ペプシコーラ ③桐葉菓

21.05.21

何を見ても何かを思い出す。感じるものをすべていままで感じてきたものとの差分において感じてしまう。すべてのものがただすべて違うだけなのだけれど、そういう風にすべて違うものがすべて違うことの素晴らしさ、その個別性を丁寧に、都度全身で受け止める…