21.06.20

 何かを言うことで言いたいことが出てくるし、何かを書くことで書きたいことが出てくる。言うことで言う身体になるし、書くことで書く身体になる。ときに何かを言ったり書いたりすることは、自分のなかにある言葉をひとつ外に出して、わたしと世界の間に放り投げて、その言葉に向かって言葉を捧げてゆく行為なのだと思う。わたしとあなたの間に言葉があって、互いにその言葉を言葉でこねくり回している状態。口内炎があると喋る気がしなくなって一日中押し黙ってしまう。そうしているうちに何もする気がなくなって一日中寝転がってしまう。五感のなかでは触覚がもっとも暴力的にひとに作用する。顔のなかでは口腔がもっとも刺激に対して過敏に反応する。常に動きどこかに触る舌に口内炎ができると、生きることの一部を禁止されているような惨めな気分になってしまう。