21.05.31

 同じ車両に乗り合わせた二人がたまたま知り合い同士で、一方が控えめに話しかけるともう一方はわずかに混乱したあとすぐに事態を理解して表情を明るくする、という場面を眺めている。知り合いとたまたま同じ時刻の同じ車両に乗り合わせるということは珍しいことだけれど、考えれば一つの鉄の箱に互いに知らないひと同士が詰め込まれて共に高速移動していることもなかなかすさまじいと思う。この箱がレールを外れたり何かに衝突すれば、たまたま同じ時刻の電車の同じ車両に乗ったわたしたちは共に死ぬことになるだろう。あまりにも暴力的で愛すべき共同性だと思う。