21.07.03-07.08

 これはもうほとんど水泳だと思う。どんなに高速移動をしても振り切れないほどの、砂かゴム膜くらいの固体感の湿った空気と霧雨がぜんぶ身体に張りついてきて勘弁してほしい。水ははっきりと界面を持った物体だということがわかる。勢いよく放たれた水は塊となって肩や腰のコリをほぐす。銭湯で茹だりながら、皮膚組織が破れるんじゃないかというくらい強いジャグジーを浴びる。ジャグジー風呂を思いついたひとはきっと水の硬さを知っている。だって高い橋の上から川に落ちたら水の硬さで死んでしまうらしい。鉄砲水が街にやってくればその硬さで家は粉々になって、そのあとはその柔らかさで全部飲み込んでしまう。昔よく犬と泳いで遊んでいた川が氾濫危険水位を超えて、実家の隣町に避難指示が出ているらしい。ツイッターでその川の名前を調べると、小学3年生のころのクラスの担任と同じ苗字のひとが、3年前の豪雨で行方不明になっていることを知る。全国に750人しかいないらしいその苗字のその先生がその人なのかは分からない。