21.06.06

 夜通しで何かしていたあと泥のように眠るとたいてい夢の中でもその音なり声なりが鳴り続けている。映画を観たあとは意味の取れない、存在しないセリフを、俳優がそのひとの話し方で、映画のなかで使われていたであろう言語で話し続けているし、クラブのあとはウーファーが押し出す空気の塊や低音の振動で身体が痺れたまま、誰が作ったわけでもない曲が、ハウスが流れるイベントのあとならハウスっぽいという感じで、丁寧にジャンルまで再現されて流れている。学習したデータベースから自動生成するAIみたいだと思うけれど、脳はそのとき何をその言語っぽさとして、何をそのジャンルっぽさとして認識し、編み上げて、夢の中で鳴らしているのだろう。夜の間中鳴っていた無数の音色やフロウといった音の断片を無意識に拾って分類し、音楽や言語のリズムトラックを抜き出して、それを夢見るときに再構成しているみたいだ。もしこの経過のことを学習と呼べるなら、学習はリミックスみたいなものだと思う。それで疲れは全く癒えることなく時間だけが経ち、昼下がりに目覚めてそのままそろそろ西陽が休日の締めくくりに取り掛かろうとするのを何もできないままただ眺めている。